東京地方裁判所 昭和41年(手ワ)1441号 判決 1966年6月23日
原告 王子信用金庫
被告 不二屋製菓株式会社
主文
被告は原告に対し金二五〇万円及びこれに対する昭和四〇年一一月九日から完済まで年六分の割合による金員の支払をしなければならない。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮りに執行することができる。
事実
原告は<省略>請求の原因として、次のとおり述べた。
一、被告は次の為替手形一通を自己宛に振出した。
金額・二五〇万円、支払期日・昭和三九年八月一五日、支払地・大阪市、支払場所・日本勤業銀行大阪南支店、振出地・東京都港区、振出日・昭和三九年三月二一日、振出人・不二屋製菓株式会社、受取人・右同、支払人・引受人・株式会社松本商店
二、原告は右手形を被告不二屋製菓株式会社より拒絶証書作成義務免除の上、裏書譲渡を受けて所持人となった。
右手形は満期に支払場所に支払のため呈示されたが支払がなかった。
三、よって、被告に対し右手形金二五〇万円および、これに対する一部利息金受領後である昭和四〇年一一月九日から支払済みまで年六分の割合による金員の支払を求める。
被告の抗弁に対し、
原告が被告からその主張の日にその主張の金額を受領したことは認める。しかし右金員中二三五万八、三八六円は、原告の被告に対する本件手形金債権、以外の証書貸付債権元本およびその利息の各支払に充当し、残二七万円は本件手形債権の利息(原被告間の取引約定による)として日歩二銭四厘の割合により満期の翌日たる昭和三九年八月一六日から昭和四〇年一一月八日までの分の支払に充当したものである。
又三井銀行の保証は被告の原告に対する、本件手形金債務以外の債務の保証であって、本件手形関係とは別に解決ずみである。と述べた。
被告は請求棄却の判決を求め、
答弁および抗弁として、
原告主張の請求原因事実はすべて認める。しかしながら本件手形金について、被告は被告の債権者委員会を通じて原告に対し昭和四〇年一月二〇日金一三〇万一、一八二円、同年四月二八日金四一万六、三七八円同年六月三日金三六万四、三三〇円、昭和四一年三月四日金五四万六、四九六円合計金二六二万八、三八六円を支払っているから本件手形金債務は弁済ずみである。
又原告主張の被告の原告に対する証書貸付債務については訴外三井銀行が被告を保証しているに拘わらず、原告は勝手に訴外人が原告に提供していた保証書を返済し、保証人たる訴外人から債権回収可能なのに自らその権利を放棄したものであるにも拘わらず、前記弁済金を証書貸付債務及びその利息債務に充当することは不当であり本件手形金債務に充当されるべきである。と述べた。
証拠関係<省略>
理由
原告主張の請求原因事実、及び昭和四〇年一月二〇日から昭和四一年三月四日までの間、被告主張の日にその主張の金額を原告が被告から受領したことは当事者間に争いがない。
そこで被告が原告に対し支払ったことについて争いのない金二六二万八、三八六円が本件手形金債権に充当されるべきかについてみるのに、右支払の当時原被告ともにいかなる債務の弁済に充当するかの指定を相手方に通知したことの証拠がないところ、成立に争いのない甲第二ないし第六号証によれば原告が主張する証書貸付による債権は本件手形の不渡りによって弁済期が到来し、その利息および損害金の定めによれば、同貸付による債権の弁済は本件手形金債務の弁済に比してより有利であることが認められるので、右被告の支払金について弁済の法定充当をすれば、原告主張のとおりの弁済充当となることが計算上明らかである。そして、成立に争いのない乙第一ないし第四号証のみでは右判断に反する証拠があるとはなし難い。
次に被告の主張する証書貸付債務について原告が不当に訴外株式会社三井銀行に対する保証上の権利を放棄した事実関係を認めるのに足りる証拠はない。
したがって、前記被告の支払金がすべて本件手形金債務の弁済に充当されるべきであるとする被告の主張は容れるわけにはいかない。
とすれば、被告の原告に対する本件手形債務が存在することは明らかである。<以下省略>。